12月21日「理事長からのメッセージ」
元阪神タイガースの新庄剛志さんが48歳でプロ野球のトライアウトに参加しました。14年ぶりで日本のプロ野球界に復活するのか、多くの人たちが興味津々でした。結果はご存じのように、最終打席でクリーンヒットを打ったものの、彼は自らの思いで本当の意味で引退を決断しました。
私は、彼とソフトボールのピッチャーと始球式で対戦する企画、それを協力したことがあります。もう20年ほど前でしょうか、彼が日本ハムファイターズにいたときのことです。西武ライオンズのしかるべき人から、この話が私に来ました。当初は、埼玉にあるソフトボールの一部リーグの女子投手との対戦をお願いされました。しかし、私はその時男子のソフトボールを少し世間にPRしたいという下心があって、「ワールドシリーズで優勝した時のエースが早稲田にまだ在籍しています。彼と新庄選手と対戦させたら面白いよ、」と提案しました。西武がこの企画に乗ってきました。男子と男子だから真剣勝負にしましょうと、私。いいですよ。その代わり3球での勝負でお願いします、それ以上はダメと、ライオンズ側の主張。勿論私はOK。
勝負の前の、私と投手中島と捕手Kとの打ち合わせ。3球でいかに新庄を三振に取るか。「いいか、1球目はライザー(ライジングボール)で行け、彼はソフトボールの球質、球道を知らないから必ずストレートを狙ってくる。それで、まず空振りでワンストライク。2球目は彼はライザーのイメージができるから、当然、ドロップ(落ちるカーブ)、そして彼が上にくるか下にくるかと迷うから、最後の3球目は、当然ストライクゾーンからボールになるライザーを投げるように」と指示。バッテリーの二人は納得。
我々は、1塁ベース横の簡易ブルペンでウオーミングアップ、そうしたらどうだ、日本ハムの選手は皆試合前で球場から控室に戻ったのに、あの新庄選手だけが3塁側のダッグアウト前で、中島の投げる下からのボールに対してタイミングを合わそうとして、真剣に素振りをしている。1球1球全力でバットを振っているではないか。私は、この男、この新庄選手、めちゃくちゃ凄いなあ、と感じ取る。この後、西武との野球の試合があるのに今こんな始球式に入れ込んでも大丈夫かなとも思ったりもする。
いざ本番、観衆約2万人、ソフトボールの選手はそんな大勢の観客の前でプレーはしたことがない。でも、素晴らしい機会を頂いたことに感謝しながら、二人は、やや興奮気味。1球、ライザー空振り、2球ドロップ空振り、我々の作戦どうりばっちり。そうしたらあの大スター新庄選手がなんとバットを短く持ってシャープにバットを振ろうとしているではないか。私は、この新庄選手の姿勢に圧倒された。この時から私は新庄選手のフアン。この方、並みのスターではないなあ、本気で勝負しようとしている、その姿が私にビンビン伝わってくるのです。3球目は作戦どうり高めのライザーで3球三振。投手の中島はあのアメリカのソフトボールのワールドシリーズで投手として最優秀投手に選出された男。アメリカの選手はメジャーリーグ上りがごろごろいる中での受賞者にふさわしい投球であった。遊びでない見事な始球式でありました。
さて、このバッテリー、その後、中島は、男子ソフトボールのジャパンのエースを長らく務めた。捕手のKは早稲田で大学院修士と博士課程を経て博士号を取得、なんとプロ野球(ヤクルト)のトレーナーを務めていた。恐らく、プロ野球で博士号を有して活躍していたのは彼ぐらいではないだろうか。
勿論、彼ら二人は、「日本ティーボール協会中級公認指導者認定資格所有者」です。あの「西武ドームの全国大会」のボランティアも「障害のあり人とない人とのティーボール大会」も4年間ボランティアとして参加、貢献した男です。講習会での成績も優等生でした。
彼ら二人並びに新庄さんのこれからの将来に幸運が来ることを願っています。