3月21日「ルールの解説 「まえがき」か「あとがき」かそれとも「ボツ」か」
日本式ティーボールの研究と実践を開始したのは、1975年です。
筆者は、1975年、早稲田大学体育局の助手として教員生活をスタートさせました。研究指導は「体育・健康教育」。それに「コーチ学・ソフトボール」の実践指導と研究です。その研究のテーマの一つが「国民皆ベース・ボール」でした。この研究は、今日まで続けています。
1977年、戦前、戦中、戦後と続いていた小学校の体育授業から「ベースボール型球技・ソフトボール」が消えました。何故かと当時の文部省に問い合わせると、「ソフトボールは、投手と捕手と打者だけのスポーツで他の児童は運動していない。小学校の体育として如何か」という返事でした。筆者は、この答えは試合形式の授業では同意する部分はありましたが、納得できませんでした。ソフトボールの授業を丁寧に行えば、二人一組のキャッチボールも、トスバッティングもできる。三人いれば「太鼓ベース」(今日のメジャーリーグゲーム)、五人、六人もいればフリーバッティングもできる。「児童が運動していない」ということはない。試合形式の授業でも、投手を攻撃側から出せば、打撃戦が行われ、試合であって全ての児童が活発に校庭で動き回れます。自分では分かっていても、その説明する相手、方法が理解できていませんでした。そのため、大学の教員として学会発表、論文、著書を重ねることにしました。
1976年に「写真で見るソフトボール」(成美堂出版)を出版し、ファーストピッチソフトボールの技術指導だけでなく「いつでも、どこでも、誰でも出来る」スローピッチ・ソフトボールの魅力についても世に紹介しました。その後10数冊の著書を5、6年の内に立て続けに出版し、ベースボール型球技の楽しさ、面白さ、また、難しさ等を世に示していきました。このような活動を行うことによって、少しずつ研究者や指導者、監督やコーチなどに理解をして頂けるようになりました。
一方、「いつでも、誰でも、どこでも、楽しくできるベースボール型球技・スローピッチソフトボール」を広く知ってもらおうと思い、1981年7月、東京大学・東京理科大学・早稲田大学のソフトボール部がスクラムを組み、「大学スローピッチ・ソフトボール研究会」(会長吉村正)をスタートさせたのです。その後、この研究会には、京都大学、同志社大学、立命大学、関西大学なども参加するようになりました。
1992年ベースボールマガジン社発行のソフトボールマガジンで「小学生にどう教えるか!セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール」を発表しました。この提案はベースボール型球技を段階的に学習する方法でした。最初のベースボール型は「セット・ソフトボール」。その一つが、ティー台のセットしたボールを打ついわゆる今日の「日本式ティーボール」。もう一つがホームプレートの上にセットしたボールを蹴る「キックベースボール」。次の「トス・ソフトボール」は、片手でボールをトスして、他の手あるいはラケットでそのボールを打つ「ハンドベースボール」。ミニピッチは、投手が近い距離から、柔らかいボールを下手からゆっくり投げる「スローピッチのベースボール」を提案したのです。ベースボール型球技を容易に行える順に紹介したのでした。この時のボールは、本稿のルール解説にもありますが、ボールの芯はカポックとし、打てば柔らかくなる素材としました。
最終的に、これらの全てのベースボール型球技を小学校でプレーするのは、授業時間数の制限から難しいと判断し「ティ・ソフトボールとティ・ベースボール」の一本化を図りました。だから、今日、日本式ティーボールは、野球のボールと同じ9インチ、ソフトボールと同じ12インチと11インチの3種類のボールがあるのです。
1993年3月、「ティ・ソフトボール」を(早稲田大学研究紀要)で発表し、同時期に、第7回大学東西対抗ソフトボールフェスティバル(大学スローピッチ・ソフトボール研究会主催・千葉県流山市の東京理科大グラウンド)で、「ティ・ボール」をプレーしたのです。「ティ・ボール」はその時の名称でした。この模様はソフトボールマガジン(4・5月号)に記事として掲載されています。
その後、この類のベースボール型球技が世界にないものかと研究を進めた結果、アメリカやオーストラリア、あるいはイギリス等で、「TEEBALL」として存在することが分かり、それらを参考にしたり、日本の独自性を残し、今日の「日本式ティーボール」のルールの基礎を創り上げたのでした。
そして、その年の1993年、早稲田大学国際会議場において「日本ティーボール協会」(会長海部俊樹・筆頭副会長吉村正)をスタートさせたのです。
このような経緯を経て、「日本ティーボール協会」と「日本式ティーボールのルールの基礎」が出来上がったのでした。
本書は、ルールを規定した当時の理念、教育的な配慮等をここに明らかにするものです。
尚、本書の表紙と裏表紙のイラストは、川崎のぼる先生(日本ティーボール協会特別顧問)に描いていただきました。世界の全ての方々にこの「日本式ティーボール」をプレーしてもらいたいと考えていますので、老若男女・障がいのある方もない方も・世界の野球不毛の地の方々も笑顔でティーボールをプレーしているイラストにしてもらいました。
「野球(ソフトボール)は楽しいぞ!」これを日本から発信したいのです。
また、吉永武史先生・頼住道夫先生らより、過分な推薦文を頂戴しました。身に余る光栄です。三名の先生には、この紙面をお借りして、感謝申し上げます。ありがとうございました。
本書が、学校の先生方、指導者、選手の皆さんに役立つことを心から願っています。
日本ティーボール協会理事長 吉村正