10月12日「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール」の提案(後編)。その1年後、1993年11月22日「日本ティーボール協会」創設
前編では、チームの守備者は投手を入れて11人と提案(日本式ティーボールでは投手がいないので10人、10人の守備位置は同じ)。セット・ソフトボールでは、「ティ・ソフトボール」と「フット・ソフトボール」の二つのベースボール型球技を提案。前者が現在の「日本式ティーボール」の原型となったことは、度々記述してきました。
本日の後編では、止まったボールを打つベースボール型球技(現在のティーボール)から投げられたボールを打つソフトボールや軟式野球に移行するためには、どのような段階を踏むのが望ましいかを、以下に提案します。
- トス・ソフトボール①(名称:トス・ソフトボール)
1 使用球 3号球の柔らかいボール
2 使用バット 太く短いバット(協会2号バットも可)
3 競技場 ①運動場
②投捕間は7.5㍍
③塁間は15㍍
4 競技者 ①11〜15名
②守備者は11名
5 投球規定 ①投手は打者の正面から、打者に打ちやすいボールをトス(山なりのボール)する。
②投手が山なりの打ちやすいボールを投げられない場合、投手は他の選手と交代する。
6 打撃規定 ①打者はバットを両手で持ち、投手がトスしたボールを、できるだけ投手以外の方向へ打つ。
②バントは禁止である。
7 走塁規定 ①走者は毎回無死一塁から開始する。
②走者は毎回その回の最終打者が一塁走者となる。
8 試合 試合は5回から成る。(7回も可)
[他のルールは、ティ・ソフトボールと同様]
- トス・ソフトボール②(名称:ハンド・ソフトボール)
1 使用球 14インチのゴムまりボール
2 競技場 ①体育館か運動場
②塁間は、12㍍
3 競技者 ①11名〜15名
②守備者は11名
4 打撃規定 ①打者は、14インチのゴムマリボールを持ち、右利きの場合、左手でボールを投げ上げしトスする)。それを右手で打つ。
②打者は、自分でトスしたボールを強く打っても、弱く打ってもかまわない。
5 野手規定
6 試合規定は、他のトス・ソフトボールと同様である。
- ミニピッチ・ソフトボール①(名称:14インチ・ソフティ・ソフトボール)
1 使用球 14インチの柔らかいソフトボール
2 使用バット 2号バット(日本ソフトボール協会検定)
3 競技場 ①運動場
②塁間は、14㍍である。
③投捕間の最も近い距離は8㍍、長い距離は、10㍍である。
4 競技者 ①11名〜15名
②守備者は11名
5 投球規定 ①投手は、投捕間8㍍から10㍍の間なら、どの位置から投球してもよい。
②投手は、自分の身長以上、その2倍の高さの間に、アーチを描くようにして、打者に打ちやすいボールを投げる。
③投手が二人連続して、フォアボールを出すと、自動的に他の選手と交代する。
6 打撃規定 ①バントは禁止である(打者アウト)
②チョップヒットも禁止である(打者アウト)
③打者がバットを投げたなら(危険な行為を行なったら)、打者アウトである。
7 ストライクゾーン 打者の肩の一番高いところから膝までの上方空間である。
8 走塁規定 ①毎回無死走者なしから開始する。
②盗塁はできない。
③走者の離塁は、打者が打った後できる。
④スライディングは禁止である(走者アウト)。
しかし、帰塁のときのスライディングは構わない。
9 試合 ①試合は5回から成る(7回も可)。
②打者は一番から順番に打つ。
③チームの全員が打つ。
[他のルールは、国際スローピッチ・ルールに準拠する]
- ミニピッチ・ソフトボール②(名称:3号ソフティ・ソフトボール)
1 使用球 3号球の柔らかいソフトボール
2 使用バット 2号バット
3 競技場 ①運動場
②塁間は、16㍍である。
③投捕間は、9㍍から11㍍以内である。
4 競技者 ①11名〜15名
②守備者は11名
5 投球規定 ①投手は下手投げで投球しなければならない(ウィンドミル投法は認めない)。
②この投球は適当なスピードであって、本塁プレートに達するまでに地面から高さ3㍍以下で、地上から1.5㍍以上のアーチを描くように投げられなければならない。
③投手が二人連続して、フォアボールを出すと、自動的に他の選手と交代する。
[打撃規定、ストライクゾーン、走塁規定、試合規定、その他のルールは、14インチ・ソフティ・ソフトボールと同じ]
【参照】吉村正(1992)<小学生の指導者必読>「小学生にどう教えるか!!-セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール-」、ソフトボールマガジン第16巻第6号、38-42頁
如何だったでしょうか?
①のトス・ソフトボールでは、投手は打者に対して打ちやすいボールをトスする、打者はそれを打つ。②ハンド・ソフトボールでは、14インチのゴム(中空)ボールを手で打つ。ここで共通することは、打者は先ず投球を打てること。そうでないと守備する選手は、ボールが飛んでこないので、動きようがないのです。
ボール(打球)が内外野に頻繁に飛ぶようになると、児童は「打つ、捕る、投げる、走る」ことを数多く経験し、ベースボール型球技の醍醐味を味わうことが沢山出来るようになるのです。そうなれば、野球・ソフトボール好きの児童が増えるのです。
以上の私の提案を受けて、日本ソフトボール協会では、「ミニピッチ・ソフトボール」の名称を「ミニ・ソフトボール」に変え、全国へ普及させるための取り組みが行われてきました。
私はこの「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール」の中で、今後どの球技を小学校の体育に導入するべきかを考え、結論を出したのが「ティ・ソフトボール」の一本化でした。それを「ティーボール」と名称を分かりやすくして、1年後の1993年11月22日の「日本ティーボール協会創設記者発表会」へと繋げたのでした。