10月22日 オリックスの勝利。中島監督の表情が印象に残りました。最終打者の打球を見ていなかったように思われます。
昨日のパ・リーグのクライマックスシリーズは、3-2でオリックスの勝利でした。これで59年振りの「関西シリーズ」が実現します。59年前というと、私が早稲田大学の受験に向けて、近畿予備校に通い、毎日必死で勉強していた時でした。対戦相手は、南海と阪神、京阪神の電鉄同士の戦い。確か「御堂筋シリーズ」とも呼ばれました。私の長兄が南海ファン、次兄が阪神ファン、家庭でも大変な盛り上がりでした。
さて、昨日のオリックスの中島監督、彼の表情を私は興味深く観察していました。二つの感情表現が印象に残っています。最初は1回裏、オリックスの3番森友哉選手が、四球の走者を一人置いて、ライト中段へのツーランホームラン。この時のダッグアウトにいた中島監督のトビっきりの笑顔がとても印象的でした。あのいつもポーカーフェイスの監督がと思うと、余程嬉しかったのでしょう。その気持ちわかるよ、そうだろう、そうだろう。私も監督を長年経験しましたから、分かります。
二つ目は、最終回3-2、二死から打者の山口選手に対して、平野投手が3球連続でフォークボールを投げた3球目、山口選手がジャストミート。三遊間を抜けたかと思われるライナーを、サードの宗選手が横っ飛びダイレクトキャッチ、試合終了です。その瞬間テレビで中島監督の表情が映し出されました。何と中島監督、このプレーを直接見ていないのです。右横で喜んでいる選手たちを見て、オリックスの勝利を確認したのでした。
私は、これが面白かったのです。監督は通常、勝利を決定するプレーは最高に楽しい瞬間ですから、何をおいても観たいはず。それを観ない。この名監督でも、勝負の怖さ、いつ何時どのようなハプニングが起こるか読めない勝負、プレーを見たくない心理、これら様々推測できるので面白かったです。
テレビの解説は、藤川球児氏。私は彼の解説が大好きです。実によく野球を知っています。読みが深いです。経験豊富で勉強家、解説に含蓄があります。彼と野球談議を10時間ぐらい行いたいとも思っています(どなたか紹介してくれませんか)。彼がシカゴ・カブスでプレーしていた時、シカゴまで応援に行きました。さて、その藤川氏が次のように解説しました。「ホームランを打たれるリスク(ストレート系)を避けてフォークボールで押しましたね」と。この解説、素晴らしい、さすがと思いました。
平野投手は、最終回先頭打者のボランコ選手にストレート系のボールをホームランされました。ストレート系は危ないのです。平野投手は、日本野球界を代表する救援投手。彼の特徴は、何と言っても経験豊富、頭脳的なピッチングができることです。彼は39歳、以前のように球威はありません。それを補っているのが豊富な経験と知識です。ストレート系は宇田川投手のように勢いはありません。ボールも動いているとは思われません。平野投手は、次の角中選手、安田選手と好打者をセカンドゴロに打ち取りました。これが凄いのです。好打者二人に対して落ちるボールを打たせて内野ゴロに仕留めているのです。
二死後の山口選手への投球、フォークボールを2球続けました。ここでは3球続けてのフォークはあるかどうか?そこで藤川氏の先ほどの解説、「フォークを低めに落とすことにより、ホームランを打たれる確率を下げています」と。全く同感。2球続けてフォークを投げ、次にストレート系を投げると、投球がチェンジ・オフ・ペースとなり空振りをとれる確率は高まります。しかし、もし山を張られてストレート系をホームランされたら、その試合の流れは完全にロッテに傾きます。平野投手はそれを警戒して、3球続けて低めへのフォークボールで勝負したのです。この場合、打者の山口選手は、2球続けてフォークボールを見ていますから、次に来る3球目のフォークボールにはタイミングを合わせやすいのです。
中島監督は現役時代、名捕手として活躍され、投手と打者との駆け引きは、熟知されています。よって、打者の山口選手が、低めのフォークボールをミートしに来るのが理解できていたのです。案の定、山口選手がジャストミート。三遊間へのライナーへの打球に、中島監督は一瞬やられたと思ったと思います。でもこれは、平野投手の思い通りなのです。藤川氏の解説の通り、ヒットは良いのです。次の打者を抑えれば良いのです。駄目なのは、ストレート系のボールを投げて、ホームランを打たれることでした。中島監督は、あの場面、ヒットは覚悟していたことでしょう。非常に面白かったです。
来週からの「日本シリーズ」がめちゃくちゃ楽しみです。59年前の南海と阪神の日本シリーズでは我が家の中を盛り上げてくれた長兄と次兄。今は88歳と85歳です。二人とも今年の日本シリーズは、それぞれの自宅で静かに見守ることでしょう。それにしても59年の年月は、世の中を大きく変えました。変わらないのは、関西の熱狂的な野球ファンたちですね。
京阪神の経済効果もうなぎ上りでしょう。京都にいなくて東京にいてよかったです。この日本シリーズを冷静に観られます。分析もできます。
次回は阪神タイガースを取り上げないとバランスが悪いと、関西の方々に怒られそうですね。次回は、岡田監督を分析しますか?