1月30日「幼児用バット、ボール、ティー(コーン)の変遷」
1993年11月22日、日本ティーボール協会発足の記者発表を行った直後、私は実家が経営する二つの幼稚園と一つの保育所に、その時最善と思われる幼児用バットとボールとバッテングティーを送りました。その時のバットは、今でいう小学3・4年生用の物、ボールは14インチのゴム製中空でした。バッテングティーは、土台がホームプレート型で、安価な物。それとだるま型ティー台の二種類を送り、実際にそれらの用具で自由に楽しんでもらうようお願いしたのです。
それから2年半後の、1996年東西大学ソフトボールフェスティバルの一環として、大学生と幼児のティーボール交流を行いました。参加大学は、東京大学、東京理科大学、早稲田大学の関東勢、関西は、同志社大学、関西大学、立命館大学のソフトボール部員で、幼児代表は上記の幼稚園と保育所の子ども達でした。場所は京都府宇治市の太陽が丘グラウンド。当日は、京都新聞、地元の洛南タイムス等が来てこのイべントを大々的に報道してくれました。このときに使用した用具は、上記の3点セット。その後、バットは重い、ティー台は金具の部分があり少し危険、ボールは少し大き過ぎる等、多くの改良点が幼稚園の先生から出され、それらの改良にそれぞれ乗り出しました。
それから、3年後、先述したように前橋先生とともに全国の幼児体育の研究者、並びに現場の先生方等のお知恵とアドバイスを頂きながら、十数年にわたってそれぞれの用具を改良していったのです。
【ボールの改良】
現在の幼児用ボール(J.T.A.ケンコーティーボールオレンジ11インチ)にたどり着いたのは、台湾のティーボール関係者のご努力が大でした。
1995年11月22日に我々が発行した「4か国語の日本式ティーボールのルールブック」を、私は台湾の野球・ソフトボール関係者・関係団体に送りました。彼らは、日本と同じルールで、同じ用具を用いてプレーし始めてくれました。しかし、数年後、台湾は日本の学校の校庭より少し狭い、体育館も狭い、そういう台湾の学校の特徴があり、彼らはボールの材質をウレタン製から変えることなく、日本のボールより少し柔らかくして、飛距離の出ないように工夫しました。これが台湾では大ヒット、適合したのです。現在台湾では、この日本式ティーボールはリトルリーグでプレーする前段階として最も適したゲームと認められ、更に小学校の授業の必修にもなっています。そのようなこともありこの日本式ティーボールは小学校の間で爆発的に普及しています。現在ではこのボールは1年に20万個から25万個ほど売れるようになったと聞いています。
私は10年近く前からそのボールを制作しているM社の社長並びに製作担当者、そして販売しているH社の関係者らと数回会い、そのボールを更に工夫を加えて日本の幼児用、体育館用(インドア用)としたのです。
【バットの変遷】
幼児に小学3,4年生用のバットを持たせたのですが、それを短く持ったとしても、やはり重すぎます。改良を迫られていました。
私は、早稲田大学のソフトボール部を連れてアメリカ遠征(ワールドシリーズ5回を含む)に19回行きました。遠征に行った都市では、先ず本屋と運動具店に行くのが習慣でした。「スポーツオーソリティー」などは、リトルリーグ用のティーボール用具は様々売っているのですが、幼児用はないのです。そこで、目を付けたのが、「トイザラス」、「ベビザラス」。そこに行くと驚いたことに、幼児用というか、おもちゃ用というか、あのメジャーリーグが使用を進めているおもちゃ用の芯がプラスチックでそれをポリウレタンで柔らかく覆ったバットがあったのです。ボールとバットのセットもありました。私は直感で、これだあ、と思いました。バットの両先に少しプラスチックが露出して少し危険な部分もあるのですが、あのメジャーリーグも推奨、これはメジャーリーグの協会からお墨付きを頂いているようなものと考え、私は、このバットに多少の改良を加え、その製作会社である台湾のK会社の社長とも会って、日本風、幼児風にしたのです。
【バッテングティー】
私は、バッテングティーに代わるものは、コーンしかないと20年、30年前から考えていました。それは、このティーボールを世界に普及し、野球・ソフトボールさらにはクリケット・ラウンダース等を支え・発展させるためには、「道路コーン」の上にボールを載せてバットか棒切れで打つしかないと思っていたからです。即ち、道路コーンは世界どこに行ってもあります。世界のそれを全て合わせれば、何千万本、何億本とあるでしょう。日本で、アメリカで使用されているバッテングティーは、コストがかかり過ぎます。発展途上国では、そのような高価なバッテングティーを買う余裕はありません。
私は、早稲田大学ソフトボール部の団長兼監督として、ワールドシリーズに出場した時、シカゴ市の近くで、ウレタン製かゴム製か、それとも特別な材質でできたか分からない、「道路コーン」を見つけました。警察に行って自己紹介をし、そこでこのコーンをくださいとお願いしたのです。勿論、私の大学での研究テーマの一つが「世界の人全員が野球好きになること」だと説明したのです。ワールドシリーズにわざわざ日本からハワイ州代表としてきていることもあり、快く無料で頂けることになりました。
この道路コーンはアメリカウィスコンシン州製でしっかりしたものです。現在協会事務所にあります。
プラスチックの安価なコーンは、鋭角で割れると危険です。だから、このアメリカ製「道路コーン」に拘ったのです。
この「道路コーン」を参考にして、現在の「幼児・小学校低学年用ティーボールコーン」をナガセケンコーの皆さんと一緒になって作り上げました。
以上が、幼児用ティーボール3点セットの短い改良・改良の歴史でした。