10月9日 今日は、9月28日<小学生にソフトボールをどう教えるか>(吉村正執筆)「ソフトボールマガジン」(ベースボールマガジン社発行)1992年1月号(上)の続きです。

 (上)では、ソフトボールのゲーム。更にはボールとルールの特性をまず述べました。そこで小学校5.6年生では、ファーストピッチのルールで授業を展開するよりは、スローピッチのルールを採用するべきだと。その上で、ソフトボールの3号球を採用するのが望ましいと強調しました。

 その次に、ソフトボールの指導内容について、10通りの方法論を紹介しました。1が、2人1組のノーバウンドのキャッチボール。2は、2人1組でゴロのキャッチボール。3は、4人1組で6-4-3のダブルプレー。4は、4-6-3のダブルプレー。5は4人1組で遠投とカットプレー。6は、2人1組で投手と捕手の練習。7は、4人1組で投手、捕手、打者、球審の練習。8は、6人1組でトス打撃と守備練習。9は、6人1組でハーフ打撃と守備練習。10は、スローピッチのゲームを学校ルールで行う。というものでした。

本日はその続きです。

 B 小学校のソフトボールゲームはどうあるべきか

Ⅰ.ジュニアルール

①ジュニアルールでゲームが楽しめるか

女子だけ集まってジュニアルールに則って試合をしたとしても、よほど練習を多く行った児童ばかり集まらないと、試合にならない。それは、まず、投手がストライクゾーンに投球できないこと、打者がストライクゾーンにきたボールを打ち返せないこと、野手が打たれたボールを捕れないこと、捕ったとしても一塁まで投げられないことなどが多く考えられるからである。

以上のことは、男子の初心者が集まったときでも、同様のことが考えられる。

そこで、ここでは、筆者が提案する柔軟性に富んだ簡易ソフトボールを紹介する。児童の性差、技術レベルに合わせて、学校単位、クラス単位で、ルールを創造し、楽しいソフトボールをプレーしてもらいたいと思う。

②日本ソフトボール協会の小学生ルール

競技ルールは、オフィシャルルールと全く同じである。が、競技場の広さと、使用する用具が異なる。

以下が、小学生ルールである。

  1. 投球距離…一〇・六七㍍
  2. 各塁間の距離…一六・七六八㍍
  3. 本塁から外柵まで…五三・三四(一七五フィート)㍍以上
  4. バット…2号バット(全国大会の場合)
  5. ボール…2号ボール(全国大会の場合)
  6. 靴…金属製スパイクは使用禁止

(他は、日本ソフトボール協会、オフィシャル・ソフトボール・ルールに準拠する)

  1. ルールに柔軟性を

[野手のルールに柔軟性を]

③11人制ソフトボールを提案する

【ねらい】

  1.  日本ソフトボール協会の小学生ルールでは、スローピッチのルールで試合を行うときが10人で、ファーストピッチのときが、9人、そして指名打者を採用すると10人でプレーしなければならない。
  2.  このルールだと、実際の小学生が行うソフトボールでは、走力のみが突出して、楽しいソフトボールを行うことができない。
  3.  そこで考えたのが、11人制である。これは、一塁と二塁と三塁のベース近くに、一塁手、二塁手、三塁手が守備し、その間に第一遊撃手と第二遊撃手が入るというものである。
  4.  さらに、それらの5人の内野手には、ダイヤモンドの中で構えなければならないことを義務付ける。これは、より内野手のプレー、特に送球を容易にするためである。
  5.  外野手については、4人にする。これは、打球は内野手の間を抜けるものが多く、それをカバーしたり、処理するのが外野手の任務の1つと考えたからである。
  6.  したがって、外野手は、第一外野手が、三塁手と第二遊撃手の間、第二外野手は第二遊撃手と二塁手の間、第三外野手は、二塁手と第一遊撃手の間、第四外野手は、第一遊撃手と一塁手の間で、それぞれ外野手の位置でプレーすることを義務付ける。
  7.  なお、第一遊撃手、第二遊撃手という呼称は、明治時代に、ベース・ボールが日本に伝わったとき用いられていたので、それを参考にしたのである。

[投手のルールに柔軟性を]

④ピッチャースボックスを描く

【ねらい】

  1.  小学生高学年では、日本ソフトボール協会が制定した小学生ルールに則って試合を行うと、まず投手がストライクを投げられないことに気付くだろう。そのため、ピッチャースボックスを描き、児童の技術レベルに合わせて、そのボックス内から投げてもよいようにする。
  2.  近くから速いボールでストライクゾーンに投げると、打者は打てなくなる。そのため、投手が投げるボールは、投手の身長を越える山なりのボールを投げなければならないとする。
  3.  捕手は中腰で構え、投手の投球を必ずワンバウンドで捕球し、ノーバウンドで捕球してはならない。
  4.  内野手は5名であり、一塁手、二塁手、三塁手は各塁ベースの近くで守備し、他の2人は、第一遊撃手、第二遊撃手と呼称し、第一遊撃手は一、二塁間、第二遊撃手は二、三塁間で守備しなければならない。
  5.  外野手は4名であり、その4名は内野手間の延長線上、外野手の守備位置でプレーしなければならない。

【行い方】

  1.  投手はピッチャースボックスから下手投げで投球する。
  2.  打者はそれを打つ。
  3.  内・外野手は打球を処理。

【施設】

  1.  ピッチャースボックスとは、ホームプレートの角から、5㍍の位置に、横2㍍、縦5㍍の長方形を描いたものである。
  2.  塁間は16㍍ある。

⑤投手は打者にトスする

【ねらい】

  1.  投手が打者に近い位置から山なりのボールを投げると、打者はより打ちやすくなる。そのため、四球も少なくなる。
  2.  打者の打球も、内・外野手方向に飛ぶようになり、競技者全員の運動量が増す。

【行い方】

  1.  投手は打者の2㍍ほど前横から山なりのゆるいボールを投げる。
  2.  打者はそれを力強く打つ。
  3.  内野手と外野手は打球を処理する。
  4.  打者走者か走者がアウトになったら、野手はボールを捕手に返し、捕手はそれを投手に送球する。
  5.  第3アウトで攻守は交代。

【施設】

  1.  塁間は16㍍である。

⑥攻撃側から投手を出す

【ねらい】

  1.  攻撃側で最もストライクの入る選手が相手チームの投手を務める。このようにすると、相手がストライクを投げる確率が高まる。
  2.  投手がストライクを投げると、打者も打つ確率が高まる。

【行い方】

  1.  投手が打者に対して打ちやすいボールを投げる。
  2.  打者はそれを力強く打ち返す。
  3.  内・外野手はそれを処理。
  4.  第3アウトで攻守は交代する。

【施設】

塁間は16㍍。

⑦バッティングティを置く

【ねらい】

  1.  打者は止まったボールを打つため、間延びしないゲームとなる。すなわち、内・外野手へ打球は頻繁に飛ぶようになる。
  2.  全員が捕ったり、打ったり、投げたり、走れたりする。ゲームが楽しくなる。

【行い方】

  1.  捕手がティ台の上にボールを乗せる。
  2.  打者は3号バットか2号バットで、その止まっているボールを力強く打つ。
  3.  投手、内・外野手はその打球を処理する。
  4.  攻撃側が第3アウト(第5アウトまで可)をとられると、攻守は交代する。

【施設】

  1.  塁間は16㍍である。

[打者のボールに柔軟性を]

⑧ボールを大きくする

【ねらい】

  1.  日本ソフトボール協会では、小学生ルールとして、2号バットで2号ボールを打つように指導している。
  2.  しかし、これだと細いバットで小さいボールを小学生は打つわけだから、なかなかバットにボールが当たらない。
  3.  そこで、それぞれのボールを柔らかく大きくしたボール、いわゆるソフティボール(セフティ・ソフトボールとも言う)の使用である。
  4.  これらのボールを用いると、打者は打つ確率が高まり、ボールはあまり飛ばないわけであるから、塁間を狭くして、より狭い場所で楽しく行うことができる。

【行い方】

  1.  投手はピッチャースボックスから投げる。打者はその投球を力強く打つ。内・外野手は、その打球を処理する。第3アウトで攻守は交代する。
  2.  投手は、打者の2㍍ほど前横から山なりのボールをトス(投げる)する。打者はそれを力強く引っ張る。内・外野手はその打球を処理する。第3アウトになると、攻守は交代する。

【施設】

  1.  ボールの大きさとソフティボールの柔らかさによって異なってくる。
  2.  14インチのソフティボールを使用すると、塁間は、10㍍から12㍍でプレーするのが望ましい。
  3.  したがって、このソフトボールは、体育館でもプレーできる。

【参照】

吉村正(1992)<小学生の指導者必読>「小学生にどう教えるか!!-セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール-」、ソフトボールマガジン第16巻第6号、38-42頁

 この(中)では、日本ソフトボール協会が薦める小学生ルールで授業を展開するのは、かなり難しいことを指摘しました。そこで、私が提案したのは、「ルールの柔軟性を」でした。それらは、野手と投手のルールに柔軟性を、が主でした。野手では11人制の提案、投手では、①ピッチャーボックスを描く。②投手は打者にトスをする。③投手は攻撃側から出す。④バッティングティーを投手の代わりに置く。の4点でした。

 ④のバッティングティーを投手の代わりに置くというのは、この評論を書いた約1年後に発表する「日本式ティーボール」の原点となるのでした。

 次回(下)に続く!